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「あの人、誰だっけ……」が増えてきた40代へ
会議中に取引先の名前がどうしても出てこない。
車のキーをどこに置いたか思い出せない。
テレビに出ている俳優の名前が、喉の奥まで来ているのに出てこない。
40代も後半に差しかかると、こういう場面が確実に増えてくる。
ここで押さえておきたいのは、脳の「記憶の司令塔」と呼ばれる海馬という部位は、30代後半から年に約0.5%ずつ萎縮していくという事実だ。
放っておけば、60代に入る頃にはかなりの容量を失っている計算になる。
ただ、ここからが本題で——実はこの萎縮、ある程度は食い止められることがわかっている。
しかもその方法が、ジョギングでも脳トレでもなく、筋トレだという研究が続々と出てきているのだ。
この記事では、筋トレが脳を守るメカニズムを噛み砕いて解説した上で、週2回から始められる実践メニューを紹介していく。

筋トレが脳を守る仕組み——BDNFという「脳の肥料」
筋トレが認知機能に効くと聞いても、「それ本当?」と思うのが普通だと思う。
筋肉と脳は関係なさそうに見えるからだ。
ところが近年の研究で、筋肉を動かすと脳内にある物質が大量に放出されることがわかってきた。
それがBDNF(脳由来神経栄養因子)だ。
ちょっと難しい名前だが、要するに「脳の神経細胞を育て、守り、つなぎ直す」ための栄養素のようなもの。
園芸で例えるなら、脳に撒く肥料だと思ってもらえればいい。
BDNFが海馬で何をしているのか
記憶をつかさどる海馬は、BDNFの恩恵を最も受ける脳の領域のひとつとされている。
BDNFが十分に供給されていると、以下のようなことが起こるという研究がある。
- 海馬の神経細胞が新しく生まれる(神経新生の促進)
- 神経細胞同士のつながりが強化される(シナプス可塑性の向上)
- 加齢による萎縮スピードが遅くなる
逆に言えば、BDNFが不足すると海馬の萎縮が加速する。
そしてBDNFの分泌量は加齢とともに自然と減っていく。つまり、何もしなければ脳の肥料がどんどん枯渇していくわけだ。
なぜ筋トレでBDNFが増えるのか
運動をすると筋肉からイリシンという物質が血中に放出され、これが脳に届いてBDNFの産生を促すことが示唆されている。
特に、ある程度の強度がある筋力トレーニングはBDNF分泌量が大きいとする報告がある。
加えて、筋トレにはもうひとつ重要な作用がある。
コルチゾール(ストレスホルモン)の適切な消費だ。
慢性的にコルチゾールが高い状態は、海馬の神経細胞にダメージを与えることが知られている。
仕事のストレス、睡眠不足、人間関係の摩擦——40代はコルチゾールが高止まりしやすい年代だ。
筋トレはそのコルチゾールを「使い切る」効果があり、運動後にはストレスホルモンが下がって副交感神経が優位になるリバウンド効果が生まれる。
つまり、筋トレは「BDNFを増やす」と「コルチゾールを下げる」の二方向から脳を守っているということになる。

有酸素運動だけではダメなのか?
正直に言うと、有酸素運動も認知機能にはプラスに働く。
ウォーキングやジョギングでもBDNFは分泌される。
これは事実だ。
ただし、40代以降に「有酸素運動だけ」で脳を守ろうとすると、ひとつ大きな見落としが生まれる。
筋肉量の減少だ。
筋肉は30代をピークに年間約1%ずつ減少していく。
厚生労働省e-ヘルスネットでも解説されているサルコペニア(加齢性筋肉減少症)と呼ばれるこの現象は、単に見た目の問題ではない。
筋肉量の低下はインスリン感受性の低下や慢性炎症の増加とも関連しており、これらはいずれも認知機能の低下リスクを高める要因とされている。
有酸素運動は心肺機能を高めてくれるが、筋肉を維持・増加させる力は弱い。
一方、筋トレは筋肉を守りながらBDNFも出せる。
だから結論としては、「筋トレを軸に、有酸素をプラスする」のが40代以降にとって最も理にかなった組み合わせだと言えそうだ。
以下で紹介するメニューも、この考え方をベースに組んでいる。
週2回から始める「脳を守る」筋トレメニュー
さて、ここからは具体的な話に入る。
「週2回の筋トレで認知機能の低下が有意に抑制された」という趣旨の研究がいくつか存在するので、まずは週2回を目安にしたい。
Day A(下半身中心)
- スクワット(自重 or ダンベル):10回×3セット
- ブルガリアンスクワット:左右8回×2セット
- カーフレイズ:15回×3セット
- ウォーキングランジ:左右6歩×2セット
下半身の大きな筋肉を動かすことで、BDNF分泌量が最も高まるとする研究がある。
スクワットは膝に不安があれば椅子を後ろに置いて座る寸前で止めるやり方でも十分だ。
形にこだわるより、「きつい」と感じる程度の負荷をかけることが重要になる。
Day B(上半身+体幹)
- 腕立て伏せ(きつければ膝つき):8回×3セット
- ダンベルロウ(ペットボトル代用可):10回×3セット
- ショルダープレス:8回×3セット
- プランク:30秒×3セット
上半身も手を抜かないでほしい。
肩甲骨周りを動かすと血流が改善され、脳への酸素供給も良くなる。
肩こりがひどい人ほど、思いのほか効果を実感しやすいかもしれない。
プラスαの有酸素:10〜20分でOK
筋トレ後に10〜20分の早歩きかバイクを入れると、BDNFの分泌がさらに上乗せされるという報告がある。
ジムであればバイクを漕ぐだけでいいし、自宅なら近所を早歩きで一周するだけで構わない。
激しく走る必要はない。

食事で差がつく——タンパク質と脳の意外な関係
筋トレの効果を最大化するには、当然ながら食事も大事になる。
特にタンパク質は、筋肉の材料であると同時に、脳内の神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)の原料でもある。
40代以降は消化吸収力が落ちるため、若い頃と同じ食事をしていてもタンパク質が不足しがちだ。
e-ヘルスネット(厚生労働省)でも中高年の運動と栄養の重要性が解説されているが、目安としては体重1kgあたり1.2〜1.6g。体重65kgなら78〜104g。これを3食で摂ろうとすると、意識しないと難しい量になる。
プロテインパウダーは、食事だけでこの目安量に届かない場合の手軽な補助手段になる。
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※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、医療・栄養の専門的指導の代替ではありません。
持病のある方・服薬中の方・通院中の方は、運動や食事の内容を変更する前に必ず医師等の専門家にご相談ください。
効果には個人差があります。
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